マンションの防音対策は、近隣への配慮だけでなく、演奏時の響き方や録音の音質にも直結します。外の車の音や子どもの声が混ざると、編集の手間が増え、演奏の良さも霞みがちです。
一方で、賃貸では工事が難しく、原状回復できる方法が前提になります。そこで大切なのが、対策する部屋の間取りを把握し効果的な場所から手を付けること。
本記事では、プロの演奏家による実例から、効率的な防音パネルや防音ボードを使った対策方法を徹底解説。工事不要で原状回復も可能な方法で、マンションの一室をプライベートスタジオに変える方法をご紹介します。
マンションで防音対策すべき音をまず整理する
楽器可でも油断は禁物!集合住宅で音がどのように伝わるか
楽器可のマンションでも、夜は音が目立ちます。理由は単純で、周囲が静かになるほど、同じ音でも音が響きやすくなるからです。
昼には聞こえなかった電車の音などが、夜になると聞こえる現象は、周囲のうるささや温度差によって音の伝搬が変化することで発生しています。

参考元:日本音響材料協会「やさしい防音講座 ―防音の基礎知識 ― 1.音とは?」(https://www.onzai.or.jp/pdf/new/gijutsu202012_04.pdf)
音の大きさと聞こえ方
音の大きさは、dB(デシベル)という単位で表します。dB(デシベル)の数値が大きくなればなるほど音はうるさく聞こえ、数値が小さいほど音も小さく聞こえます。
防音対策を行うにあたって参考にされがちなのが、音が何dB下がるかという「透過損失(とうかそんしつ)データ」ですが、この数値はあくまでも決められた測定条件で計測された”参考値”であって、大切なのは”実際にどのように聞こえているのか”という体感度合いです。
例えば、数値で 「-10dB」下がると聞いても実感が湧きにくいですが、これは「今聞こえている音が、だいたい半分程度に聞こえる」ほどの差です。この数値は、実際に音を聞く場所や環境によっても変化します。
そのため、防音対策を行う場合には、音が何dB下がるかといったような数値目標を決めるのではなく、「話していることが分からない、気づかない。」「楽器を演奏している音はなんとなく聞こえるけど、どんな曲なのかはっきりと分からない。」状態など、具体的なイメージを目標にすることをおすすめします。
周りからの騒音と自分の音漏れ対策、どちらを優先すべきか
効率的な防音対策の秘訣は、部屋作りの目的に合わせて「防ぐべき音」を絞り込むことです。
例えば、YouTubeの撮影や宅録がメインなら、外のノイズ(交通音など)を遮断して録音クオリティを上げることが重要です。一方、夜間の楽器演奏やゲーム実況による音漏れが心配なら、自分が発生する音の音漏れ対策が最優先となります。
「静かな環境が必要」なのか「周りを気にせず音を出したい」のか。この方向性を明確にすることで、対策の優先順位が見えてきます。
具体的なマンションでの対策内容を決める
部屋の間取りやレイアウトを元に対策箇所を決める
防音対策の目的を確認したら、次はお部屋の間取りやレイアウトをもとに、具体的な対策箇所を絞り込んでいきましょう。
今回は、後ほど詳しくご紹介する「プロのウクレレ演奏家」のお部屋を例に、実際の間取り図を見ながら、どこをどう対策するかを決めていきます。
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画像の通り、今回対象となるお部屋は壁4面のうち2面が外壁に面しており、それぞれに腰窓が設置されています。
廊下や別室への音漏れはそれほど重視しないとのご要望でしたので、今回は「屋外からの騒音」と「近隣への防音」に的を絞って対策を進めていくことにしました。
そのため、実際に対策する場所としては、「窓①」「壁面①」「窓②」「壁面②」の4箇所になります。
どの時間帯に音を出したいのか、活動時間も確認しておく
本記事の冒頭でもお伝えした通り、実際に音を出す時間帯によって、音の伝わり方や“うるさく感じる度合い”は変わってきます。
特に注意したいのが夜間です。夜は車の走行音や生活音が減って周囲が静かになるため、同じ音量でも昼より目立ちやすく、隣室・上下階に「響いている」「気になる」と受け取られやすくなります。
また地域によっては、夜間の騒音について40dB以下といった基準が定められている場合もあります。
※ 40dBはイメージとして、図書館の中や静かな住宅地の夜くらいの静けさに近いレベルです。つまり、夜間は「普通に過ごしているだけで静かな環境」になりやすい分、少しの音でも相対的に大きく感じられやすい、ということです。
そのため、「自分がどの時間帯に活動するのか」、それによって「どの程度まで防音対策をするべきか」というのは事前に把握していただくことをおすすめいたします。
【実例】ウクレレ奏者・鈴木智貴さんのご自宅を「防音パネル」で対策
「外の音も、自分の音も、気にならない部屋にしたかった」
今回ご紹介するのは、プロのウクレレ奏者として活動されている鈴木智貴さんの防音事例です。
実は、智貴さんとは2013年に初めてやり取りさせていただき、ピアリビングの防音対策についてYoutubeでご紹介いただいたことをきっかけに長年お付き合いさせていただいておりました。
鈴木智貴さんの詳しいプロフィール
【ウクレレなのにポップ】をテーマに活動中。
心の琴線に触れる優しい音色からウクレレのイメージを覆すようなアグレッシブな演奏まで、小さな楽器から繰り出される無二の音色が聴く人を魅了します。
2013年にウクレレと出会い、わずか2年半で第8回 ジ・ウクレレコンテストにて大賞を受賞。(日本1位)
続く2016年10月に行われた国際大会”Ribbee’s World Ukulele Championship 2016″では世界1位に選ばれたこともある凄腕ウクレレ奏者です。
以前の智貴さんのピアリビングでの防音対策動画は、以下YouTubeでもご紹介しております。よろしければご参考ください。
なぜマンションで防音対策をしようと思ったのか?
今回は新しい住居兼オフィスにお引越しされたことをきっかけに、防音対策を検討され、ご相談いただきました。
選ばれた物件は、ファミリー層の多い集合住宅。お部屋には共用廊下に面した窓が2つあり、
- 廊下を走る子どもたちの声
- 足音や話し声といった生活音
が、録音時にどうしてもマイクに入り込んでしまう環境だったそうです。
「外の音はできるだけ遮りたい。でも、自分の演奏音も外に漏らしたくない」
この2つを同時に解決する必要がありました。
今回ピアリビングがご提案した防音対策
今回のお部屋は共用廊下からの音漏れが最も気になったため、
- 【壁面①】直接面していないが、換気扇などの音が入りやすい 壁と窓
- 【壁面②】共用廊下に面した 壁と窓
を重点的に防音対策することをご提案しました。

壁面①には、ピアリビングオリジナルの防音パネル『ワンタッチ防音壁』を設置して、窓①は取り外しができる防音ボード『窓用ワンタッチ防音ボード』を。
壁面②と窓②は、『ワンタッチ防音壁』を全面に設置して、窓自体を塞ぐ形で対策を行いました。
部屋を「プチスタジオ化」する対策前後のビフォーアフターがこちら
お部屋全体のBeforeAfterとしては以下の通りです。


▼【壁面①】直接面していないが、換気扇などの音が入りやすい壁①と窓①のビフォーアフター


▼【壁面②】共用廊下に面した壁②と窓②のビフォーアフター


防音対策に必要な商品数や設置イメージの算出
以下にて、商品製作時に作図した図面をもとに実際に必要な費用を計算します。
実際に商品製作時に使用した製作図面

壁面①と窓①の設置手順と予算を算出
壁面①に関しては、取付部材の『塩ビ ジョイナー』などを使用せずに、『コニシ 超強力ボンドテープ(巾50mm×10m巻)』でそのまま壁に貼り付けました。
※『コニシ 超強力ボンドテープ(巾50mm×10m巻)』の設置箇所に、事前にマスキングテープを貼って、壁面を保護しています。
※今回は壁紙保護を目的としてマスキングテープを使用しています。通常とは異なる設置方法ですが、事前にお客様へご説明のうえ、ご理解・ご了承をいただいております。
※通常、賃貸物件ではラブリコや突っ張り棒による固定方法を推奨しております。詳しくは「ワンタッチ防音壁」の取付部材に関するページをご覧ください。

- ワンタッチ防音壁(グレード:スタンダード & 取付部材:ジョイナー)8枚
- 価格:140,800円(税込) /1枚あたり17,600円(税込)
- 取付部材 コニシ 超強力ボンドテープ(巾50mm×10m巻)4個セット
- 価格:14,080円(税込)
- 窓用ワンタッチ防音ボード(2枚連結タイプ:幅1216-1835mm × 高さ1206-1505mm)1組
- 価格:112,420円(税込)
つまり、壁面①と窓①を対策する場合、【合計:267,300円(税込)】の費用が発生いたします。
壁面②と窓②の設置手順と予算を算出
壁面②と窓②に関しては、取付部材の『塩ビ ジョイナー(嵌合型タイプ)』などを使用し、『コニシ 超強力ボンドテープ(巾50mm×10m巻)』も使って設置を行いました。


- 左端の壁面用:ワンタッチ防音壁セット(スタンダード 部材:ボンドテープ付のみ 幅50-900mm×高さ1801-2400mm)
- 52,800円(税込)
- 窓部分埋め込み用:ワンタッチ防音壁セット(スタンダード 部材:ジョイナー 幅901-1800mm×高さ1801-2400mm)
- 122,100円(税込)
- 取付部材 塩ビジョイナー(勘合型 50mm 端部用 911-1820mm)2本
- 11,990円(税込)
つまり、壁面②と窓②を対策する場合、【合計:186,890円(税込)】の費用が発生いたします。
お部屋全体の対策にかかった費用と時間
今回のケースで、壁と窓の防音対策にかかった合計費用は【454,190円(税込)】となりました。(※2026年2月時点での価格となります。)
設置については2人で1時間程度で完了しました。設置中は工事音がしないので、近隣を気にすることなく対策することができます。
また、今回使用した『ワンタッチ防音壁』は、お引越ししても繰り返し使えますので、再利用することが可能です。
実際に壁と窓の対策に使用したアイテム

防音パネル「ワンタッチ防音壁」
高密度の吸音材で遮音シートを挟み込んだサンドイッチ構造の防音パネル。取り付け部材は接着不要なものもあるので、賃貸でもお使いいただけます。
防音効果:最大10dB減/オーダーカット・断熱/幅50~5400mm×高さ901~2700mm, 50mm厚/2種10色展開/17,600円(税込)〜

防音ボード「窓用ワンタッチ防音ボード」
工事もビス留めも不要で、窓枠にはめ込むだけなので賃貸でもOK。声に対しては、約20dB減衰する実験結果が出ています。
防音効果:★★★★★★(12〜14.9dB減)/高気密+サンドイッチ構造/賃貸OK/幅300~3655mm×高さ300~2100mm,58mm厚/10色展開/22,000円(税込)~
設置前後で変わったこと
設置後に防音効果を検証
設置完了後、騒音計を使用して防音効果を検証しました。智貴さんの叫び声が、対策前と対策後でどの程度変化するのかを確認していきます。

まず、対策前に室内で智貴さんの叫び声を計測したところ、81.6dBと非常に大きな音量でした。
さらに、その音を共用廊下側で測定すると 60.7dBとなり、耳でもはっきりと叫び声が分かるレベルでした。一方、対策後は52.8dBとなり、対策前と比べて7.9dBの低下が確認できました。
叫び声は常に一定の音量ではないため誤差は考えられますが、実際に廊下で聞いた印象としては、「ほとんど何も聞こえなくなった」と感じられるレベルでした。
智貴さんにインタビュー
対策終了後に、智貴さんにインタビューさせていただきました。
新しいオフィスの大きな窓のすぐ外が廊下になっており、子供たちが元気に遊ぶ声が賑やかだったためです。仕事として動画撮影や音楽の録音を行う予定があり、マイクに外の音が入らないようにすること、そして中の音が近隣への騒音トラブルにならないようにする必要がありました。
大声を出して確認してみましたが、音が全く気にならなくなりました。
「子供がたくさん走っても大丈夫」と思えるほどの安心感があります。また、壁が真っ白になったことで、部屋全体が以前より明るく綺麗に感じられるようになりました。
いいえ、とても簡単でした。設計がぴったりで、手順通りに順番にはめていくだけでした。カッターなどの刃物を使う必要がなく、ハサミ(両面テープ用)だけで安全に作業でき、パネル自体も驚くほど軽量でした。
今回の事例では、実際の暮らしや制作環境に即した防音対策を通して、「マンションでも、工事をせずにできる防音対策」のひとつの形をご紹介しました。
ご紹介した事例が、
- 「音を気にせず演奏したい」
- 「自宅で安心して収録できる環境をつくりたい」
と考えている方にとって、少しでも参考になれば嬉しく思います。
よくある質問
楽器可マンションであっても、防音対策を行っていただくとより安心です。あらかじめ十分な防音対策が施されているマンションであれば問題ありませんが、中には防音性が高いとは言えないものの、できるだけ多くの方に入居してもらう目的で「楽器可」と案内されているケースもあります。一度トラブルに発展してしまうと解決が難しくなるため、事前に防音対策を行っておくことをおすすめします。
夜は昼に比べて静かな環境になりますので、防音対策は非常に難しくなります。環境省が定める環境基準では45dB以下(静か)となりますが、実際はその音量でも何を演奏しているか分かる可能性は十分に考えられます。元々の建物の防音性に依存しますが、近隣に聞こえる音は30dB程度まで抑えることが安心かと思います。
ワンタッチ防音壁や、窓用ワンタッチ防音ボードを設置しても防音効果が十分でない場合、音の抜け道がどこかにある可能性が高いです。いま対策している場所から本当に音が聞こえているのか・漏れているのかを確認し、対策を強化しましょう。ただし、建物全体から音が聞こえていたり、振動してしまっている場合は、簡易的な防音対策では対策できない場合がございます。
まとめ
「マンションだから」「賃貸だから」と、楽器演奏や配信を心のどこかでセーブしていませんか?
今回ご紹介したウクレレ奏者・鈴木智貴さんの事例が示す通り、大がかりなリフォーム工事をしなくても、対策したい音の目的に合わせて「音の通り道」を塞ぐことで騒音や音漏れをしっかりと軽減することが可能です。
防音対策は、単なる「騒音トラブル防止」ではありません。外の雑音に惑わされず演奏に没頭できる時間、そして納得のいくクオリティで収録できる環境を手に入れるための、自分への投資でもあります。
まずは自分の部屋の「音の抜け道」をチェックすることから始めてみませんか?ご不明な点などございましたら、お気軽に防音専門ピアリビングまでご相談ください!