「夜間にギターを演奏したい…」「弾き語りの録音したい…」
そんな音楽好きの方にとって、“賃貸アパート”という環境はとてもハードルが高いものです。
今回は、「木造アパートで夜間にギターと歌声の収録をしたい」というお悩みを例に、現状の課題を整理し、最適な防音対策についてご紹介していきます。
▼今回のお悩み
物件:木造アパート
どこに対して:隣室
音の種類:エレキギター/男性の歌声の収録時の音
いつ:夜間
音の大きさ:50〜100dB
木造アパートは「音が響きやすい」構造
木造の界壁(間仕切り壁)は、音を減衰させる性能を示す D値 がD-35 前後です。
一方、鉄筋コンクリート(RC)壁は D-50 程度 とされているため、RC造より木造の方が、かなり音が響きやすいです。さらに隣室へは、壁だけでなく隙間ができやすい窓からも音が漏れてしまうため、注意が必要です。
木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)の防音性の違いはこちらの記事でもご紹介しています。
ギターの音や歌声はどれくらい響く?
エレキギターの音量は50〜60dBと通常の話し声レベルですが、アンプを繋ぐと100dB近い音となります。音の音域は80〜1000Hzほどで、特に低音域の音は、響きやすいです。
また、男性の歌声は、100〜8000Hzの周波数で音量は70〜90dB程まで及ぶため、夜間では騒音トラブルに発展しやすくなります。

仮に今の音量を保ったまま、夜間の静かな時間帯(30dB)にお隣に対して音漏れを防ぎたいのであれば、-20〜30dB程度の防音が必要となります。
音の種類 | 室内での最大音量の目安 | 防音対策後の最大音量の目安 |
エレキギター(ピック弾き) | 60 dB | 30〜40 dB |
エレキギター+アンプ | 80〜100 dB | 50〜70 dB |
男性の歌声 | 70〜90 dB | 40〜60 dB |
住宅地の場合、夜間は45dB以下が理想とされています。(※参照:環境省 騒音に係る環境基準)
建物自体の遮音性能を引いて、室内では最大70dBまで音を抑えることが必要となります。
木造アパートで音楽録音をするためのおすすめの対策
今すぐお金をかけずにできる対処法
防音対策の商品を買う前に、ちょっとした工夫で音を軽減できる対処法をご紹介します。
演奏や収録環境を見直す
まずは「演奏する方向」や「収録場所」の見直しをしてみましょう。
例えば…
・隣室の壁から離れた位置で演奏する
・ドアや窓の近くで収録しない
といったちょっとした工夫だけでも、音の伝わり方が大きく変わります。また、スピーカーも人の声も低音域になるほど全方位に音が広がるため、可能であれば、クローゼットなどの閉じられた空間で録音するのも効果的です。
できるだけ音量を小さくする
アンプを使わないで生音で演奏したり、アンプにヘッドフォンジャックがある場合ヘッドフォンを使うことで音漏れを防ぐことができます。
また、収録の際はPCやスマホに接続可能なオーディオインターフェイスとDAWソフトを使うこともおすすめです。
もしアンプを使用する時は5W以下の小型アンプを使い、音量を最小限にしましょう。
収録時間を見直す
夜間は非常に静かなため、少しの音でも響いてしまいます。できるだけ21時以前に収録を終えるなど、収録の時間帯を見直すことで、トラブルを避けやすくなります。時間帯を工夫するのは、費用もかからず、心理的な負担も軽減できる方法です。
賃貸の木造アパートで叶う防音対策
ギターや歌声を-20〜30dB程度の防音するなら、音源をしっかり囲って対策できる防音室が最適な方法です。
防音室には様々な種類があり、本格的な防音ができるユニット型防音室、自分で簡単に組み立てができる組立式簡易防音室などがあります。
ユニット型防音室は、遮音等級D-40と非常に高い防音効果を得ることができますが、重量が300kg〜1t程と非常に重さがあります。そのため、木造アパートは床の耐荷重が低く、賃貸では許可が得られないケースが多いです。
今回は木造アパートでも設置ができる防音室や音が漏れやすい箇所を部分的に対策する方法をご紹介します。
組立式防音室「おてがるーむ」を導入する

ピアリビングの組立式簡易防音室「おてがるーむ」は、内部の防音パネルの構造が吸音材と吸音材の間に遮音材を挟んだサンドイッチ形状になっており、中低音域の音を吸音する素材を使用しています。重量は50kgと比較的軽量で、商品が届いたその日に組み立てが可能。DIYに不慣れな方でも1時間程度で完成します。

500Hzの音域で平均27dB軽減できるため、同じ室内では演奏している曲がわかる程度に聞こえますが、隣室の壁を挟むと、かなり音は軽減され、なんの曲かわからない程度の聞こえ方になります。

簡組立式防音室「おてがるーむ」
平均最大27dBの軽減効果(500Hzの場合)/吸音×遮音のサンドイッチ構造/簡単設置・再組立可/内寸幅815×高さ1880×奥行き1110mm/2色展開
価格:209,000円(税込)
DIYで防音ブースを作る

賃貸でも壁紙を傷つけずに防音パネルと組み立て部材を組み合わせて、自分の好きなサイズに作ることができるタイプの防音室です。防音パネルはピアリビングオリジナルの「ワンタッチ防音壁」、組み立て部材は「ラブリコ・2×4材セット」と「塩ビジョイナー」の併用がおすすめです。出入り口は、簡易的に防音カーテンを設置したり、取り外しができる防音ボードなどを設置する方法があります。電話ボックスに近いサイズで20〜30万円程度の費用。遮音性能は、-20〜25 dBほどを見込めます。
ワンタッチ防音壁で防音室を作成する方法は、下記のブログで紹介しているので良ければご覧ください。

防音パネル「ワンタッチ防音壁」
防音効果:最大10dB減/高密度+サンドイッチ構造/賃貸OK・オーダーカット・断熱/幅50~5400mm×高さ901~2700mm, 50mm厚/2種10色展開/17,600円(税込)~

取付部材 「ラブリコ・2×4材セット」
壁の前にラブリコと2×4材を立て、それらの間に差し込んだ防音パネルを壁に押さえつけるように設置できるので、ビス留めや接着の必要がありません。
窓に防音ボード「窓用ワンタッチ防音ボード」を設置する
低音域の音は自室の窓からお隣の窓に回り込んで透過する可能性があります。特にギターや男性の声のように低音域を防音する場合は、防音カーテンでは期待するほどの効果が得られない可能性があるため、しっかりと重さと厚みのある窓用の防音ボードで窓を塞ぐことで音漏れを軽減できます。
ピアリビングで販売している防音ボード「窓用ワンタッチ防音ボード」は、中低音域(250〜800Hz)で10dB程の軽減、中高音域以上の高い音になると20dB近い軽減が可能です。

防音ボード「窓用ワンタッチ防音ボード」
防音効果:★★★★★/高気密+サンドイッチ構造/賃貸OK/幅300~3655mm×高さ300~2100mm,58mm厚/10色展開/22,000円(税込)~
H2組立式防音室の効果とは?
今回はピアリビングのショールームにて、実際にエレキギターをアンプに繋いで出す音が、組立式簡易防音室「おてがるーむ」でどのくらい軽減できるのか検証してみました。
実験結果
- 対策なし : 最大87.3 dB
- 防音室の内部 : 最大60.7 dB 約 −26.6 dB
- 隣の部屋 : 最大40.5 dB 約−46.8 dB/室内比 −20.2 dB
75〜90dB近い音を同じ室内で60dB程度に軽減することで、隣の部屋では環境省で定められた夜間での音の基準である45dB以下に抑えることができました。
実際の音実験の様子をこちらの動画でご紹介しているので、ぜひご覧ください。
まとめ
木造の賃貸でも、ギターや歌声の録音を諦める必要はありません。今回ご紹介した、今すぐできる対処方法3選や賃貸でも導入できる防音室などを組み合わせることで、近隣に迷惑をかけずに趣味の時間を楽しむことができます。
防音室の防音効果や防音DIYの方法を直接知りたい、体感したい方は東京と福岡にある防音ショールームで実物を確認することができます。
また、ビデオ通話で無料の防音相談を受けることができる「オンライン防音相談」も受け付けています。お部屋の状況や予算に合わせて、どんな対策方法があるかなど、防音のプロがご提案します。気軽にご相談ください。

よくある質問
Q.木造アパートで夜間にエレキギターを録音する場合、どれくらいの遮音性能が必要ですか?
A.夜間の環境騒音(約30 dB)に対し隣室へ漏れる音を45 dB以下に抑えるには、-20〜-30 dB の遮音が目安です。
Q.賃貸アパートでも音楽録音用の防音室は設置できますか?
A.はい。総重量 約50 kg の組立式簡易防音室なら木造アパートでも床荷重を超えにくく、管理会社から許可が得やすいケースが多いです。特にピアリビングの「おてがるーむ」は、届いた当日に D組み立て可能です。
Q.組立式防音室「おてがるーむ」の防音効果は?
A.500 Hz で平均 -27 dB、実験では室内 87 dB→内部 61 dB→隣室 41 dB と、夜間基準値(45 dB)以下まで低減できました。
Q.「おてがるーむ」はどのくらいで組み立てられますか?
A.工具不要で 約1時間。DIY初心者でもパネルをはめ込むだけで完成します。
Q.DIYで防音ブースを作る場合の費用と遮音性能は?
A.ワンタッチ防音壁+ラブリコ等で電話ボックスサイズを作ると 20〜30万円/-20〜-25 dB が目安です。賃貸でも壁を傷付けずに施工可能。
Q.300 kg 以上のユニット型防音室は賃貸に置けますか?
A.木造賃貸は床耐荷重が低く 設置不可 のケースが大半です。事前に管理会社へ確認しましょう。
Q.アンプ使用時のエレキギター(最大100 dB)の音漏れ対策は?
A.① 5 W以下の小型アンプ+音量最小、② ヘッドホン出力 利用、③ 防音室内で演奏、これらの対策を組み合わせると効果的です。
Q.低音が窓から漏れるのを防ぐ方法は?
A.窓用ワンタッチ防音ボードで250–800 Hz を約 -10 dB、高音域で約 -20 dB 軽減できます。窓のサイズに合わせてオーダーメイドで製作し、お届けします。
Q.今すぐお金をかけずにできる防音対策は?
A.① 隣室と反対側で演奏 ② 窓・ドアから離れる ③ クローゼット内で録音 ④ アンプを使わず生音+オーディオIF録音 — だけでも体感的に音漏れが減ります。
Q.録音に適した時間帯は?
A.夜間は静寂で音が響きやすいので 21 時以前に終了 すると近隣トラブルを回避しやすく、心理的負担も軽減します。