「夜間のポッドキャスト収録中に、突然壁を叩かれてしまった……」。木造アパートでは、男性の低めの声は壁を通り抜けやすく、70dB 程度の話し声でも隣室に届いてしまうことがあります。この記事では「ポッドキャスト収録用防音部屋」をテーマに、身近にできる工夫からピアリビングでできる防音対策までご紹介します。

▼今回のお悩み
物件:築古の木造アパート
どこに対して:隣室
音の種類:男性の収録時の声、スピーカーの音(BGMなど)
いつ:夜間
音の大きさ:70dB

男性の話し声は低い音域であるため、対策が難しく工夫が必要

男性の声域は90〜130Hzと低く、空気を強く振動させるため、窓やドアなどはもちろん、壁や床に関しても音が透過しやすい性質を持っています。

話し声の周波数と音量

図:複数文献を参考にピアリビングにて作成(主な出典:1〜17参照)

しかも低音は減衰しにくいため、木造アパートのように防音性が低い建物では隣室に音が響きやすくなります。

音トラブルになる原因

木造アパートで男性の声( 70 dB )がお隣に対して音トラブルにつながる背景は、①建物構造の弱さ ②周辺環境の静けさ ③声量そのもの、この三つが考えられます。まずは“音がどこから、どうやって漏れているか”を知ることで、効果的な対策が見えてきます。

 構造的な問題:お隣への音漏れの最大原因は「壁」

木造アパート、特に2000 年以前に建てられた物件の壁は防音性が低く、低音域(〜200Hz)で 20 dB 前後しか音を減衰できません。つまり70 dB の声は隣室で 50 dB 前後の音として聞こえてしまい、深夜の静かな時間帯(30 dB)では「うるさい」と感じ、話の内容まで分かってしまう可能性もあるほどです。

木造アパートで低音域の音は20dB程度しか減衰しない

また、下図のように、音漏れの原因は壁だけではありません。窓やドアなど、室内の遮音性が低い箇所から音が伝わるケースもあります。

なお、お住まいの建物が比較的新しい場合は、壁の遮音性能が高い可能性があります。そのような場合は、窓やドアといった開口部を優先的に対策することをおすすめします。

※本記事では、築年数の古い木造アパートで壁の遮音性が低いケースを前提にお話ししています。

木造アパートの遮音性能(低音域の場合)

 環境的な要因:静けさが音を際立たせる

夜間の住宅地は非常に静かで、暗騒音(周囲に何も音がない状態の環境音)は25〜30dBと、図書館よりも静かです。この静けさの中では、ほんの小さな音でもはっきり聞こえてしまいます。たとえば室内の冷蔵庫のモーター音(35dB)が止まった瞬間に、隣からのポッドキャストの収録中の話し声が一層際立って聞こえることがあります。防音対策を考えるうえでは、単に「何dB下げるか」だけでなく、「周囲の暗騒音がどれくらいか」を知ることも、とても重要です。

単純に音が大きいため

人によって話し声の大きさは異なりますが、今回のケースですと、70dBを超えると、壁を越えて隣室に届く可能性が高くなります。特に夜間のような静かな環境では、60dB程度の通常の会話レベルでさえ、音漏れの原因になります。意外と“普通の声量”でも騒音トラブルになる可能性も少なくはありません。

20dB以上の防音が理想

理想は、音を20dB以上減衰させて、周囲の暗騒音(25〜30dB)よりも静かな状態を保つことです。それが難しい場合でも、夜間の環境基準(※)である45dBを超えないよう、最低でも10dBの減衰は必要になります。生活環境や目的に応じて、10〜20dBの範囲で対策を検討するとよいでしょう。

地域の類型昼間夜間
療養施設、社会福祉施設等50dB以下40dB以下
住宅地域55dB以下45dB以下
商業・工業地域等60dB以下50dB以下

環境省「騒音に係る環境基準について」を元に作成

ポッドキャスト収録の声が隣に漏れないおすすめの対処法

ここからは、すぐに試せる簡単な工夫から、材料費をかけて静けさをしっかり確保する本格的な対策まで、段階的にご紹介します。はじめはお金のかからない工夫からスタートし、最終的に防音材で仕上げる流れにすると、無駄なく確実に音漏れを抑えられます。

身近にできる工夫

収録環境を見直す

まずは「話す方向」や「収録場所」の見直しをしてみましょう。例えば、

  • 隣室に向かって話さないようにする
  • ドアや窓の近くで録音しない

といったちょっとした工夫だけでも、音の伝わり方が大きく変わります。

また、スピーカーも人の声も低音域になるほど全方位に音が広がるため、可能であれば、クローゼットなどの閉じられた空間で録音するのも効果的です。

収録する時間を変える

これまで述べてきたように、夜間は非常に静かなため、少しの音でも響いてしまいます。できるだけ21時以前に収録を終えるなど、収録の時間帯を見直すことで、トラブルを避けやすくなります。時間帯を工夫するのは、費用もかからず、心理的な負担も軽減できる方法です。

ピアリビングでできる防音対策

ここでは、ピアリビングの商品を使った、木造アパートでもしっかり効果が得られる防音対策をご紹介します。特に、隣室への音漏れを10〜20dBほど軽減したい方に向いています。

音源を囲う方法:20〜30dB軽減

もっとも費用対効果が高いのが「音源を囲う」という方法です。マイクやスピーカーなど音の出るものを囲うことで、500Hzの音域で20〜30dBもの防音効果が得られます。ピアリビングでは、デスク周りを囲う「HISOHISOブース」や、簡易防音室の「おてがるーむ」など、設置が簡単な防音製品を取り扱っています。

HISOHISOブース

防音ブース「HISOHISOブース」

防音効果:20dB減/高密度+サンドイッチ構造/オーダーカット可/3サイズ展開+オーダーサイズ対応/61,600円(税込)~

おてがるーむ

簡易防音室「おてがるーむ」

防音効果:20dB減/吸音×遮音のサンドイッチ構造/簡単設置・再組立可/内寸幅815×高さ1880×奥行き1110mm/2色展開/209,000円(税込)

下記の動画では、おてがるーむの防音実験を行っていますので、良ければご覧ください。

音源対策なし対策あり防音効果
音楽71.2dB59.8dB11.4dB減
笑い声78.4dB59.1dB19.3dB減

おてがるーむの中で音を流し、1m離れた場所でどの程度防音されるのかを検証しています。防音対策を行なっても(扉を閉めても)おてがるーむの周辺では音自体は聞こえるのですが、お隣の部屋で聞くと全く音が聞こえないレベルまで小さくなりました。

ちなみに…

「自分に合う大きさの防音室がない」という方は、防音パネルを使ってご自身で防音ブースを作る方法もございます。ピアリビングのオリジナル防音パネル「ワンタッチ防音壁」・取付部材(塩ビジョイナー・ラブリコ・2×4材)を使って自身でブースを作る方法です。ブースを作る際は、極力開口部を少なくした方が効果が得られやすいです。

下記の動画では、DIYで作成した防音ブースでどの程度防音されるのか検証を行いました。2面を防音材で囲い(床から天井まで)、出入りを考えて後ろのみ開口された状態となっています。この状態で、周辺で音を出し、防音ブースがある時にどの程度音が軽減されるのか検証しました。

音源対策なし対策あり防音効果
掃除機の音86.8dB69.8dB16.8dB減
テレビの音80.7dB66.6dB14.7dB減
水を流す音81.8dB72.9dB8.9dB減

こちらのブースは後ろが開口されているため、おてがるーむに比べて防音効果は落ちる可能性が高いですが、全ての音において10dB〜15dB程度の効果がありました。

ワンタッチ防音壁で防音ブースを作成する方法は、下記のブログで紹介しているので良ければご覧ください。

壁に防音パネルを貼る方法:〜10dB軽減

「できるだけ部屋を狭くしたくない」という方には、壁に設置する防音パネル「ワンタッチ防音壁」がおすすめです。ただし、こちらは低音域にはあまり効果がないため、悩んでいる音が中〜高音域(250Hz以上)であれば効果を実感できる可能性があります。

ワンタッチ防音壁

防音パネル「ワンタッチ防音壁」

防音効果:最大10dB減/高密度+サンドイッチ構造/賃貸OK・オーダーカット・断熱/幅50~5400mm×高さ901~2700mm, 50mm厚/2種10色展開/17,600円(税込)~

「実際のワンタッチ防音壁の防音効果を知りたい」という方に向けて、下記の動画では、築30年の木造アパートの壁1面にワンタッチ防音壁を設置した場合、どのくらい音が軽減されるのか実験を行いました。良ければご覧ください。

ワンタッチ防音壁対策前
対策なし
ワンタッチ防音壁対策あり
対策あり

最大69.5dBの男性の話し声(スピーカーから流した音声)が、お隣で聞いた時にどの程度軽減されるのかを検証しました。

対策なし対策あり防音効果
37.5dB34.7dB2.8dB減

※計測中に外から音が入ってしまい、騒音計の数値は正確な値ではございません。動画内で実際の音の聞こえ具合を参考にされてください。

感想としては、防音対策をしない状態では「何を話しているのか分かるレベル」だったのが、「声自体は聞こえるが、何を話しているか分からないレベル」となりました。

ポッドキャスト収録時の音漏れを防ぐためのチェックリスト

  • ◻︎録音しながら隣室への音漏れがないか実験・測定した上でどの程度の対策が必要か理解している
  • ◻︎隣室の壁や開口部(窓・ドア)に向かって話していない
  • ◻︎マイクの向きと配置を見直した(隣に背を向ける配置にしている)
  • ◻︎ドア・窓の近くで収録していない
  • ◻︎収録時間は21時以前を目安にしている(夜間は避ける)
  • ◻︎隣室との壁が薄いことを認識し、収録ボリュームに注意している
  • ◻︎最低10dB以上の減衰を目指している(夜間環境基準:45dB以下)
  • ◻︎可能であれば20dB以上の音の軽減を図っている(夜間でも気にならないレベル)

よくある質問

Q. 木造アパートでポッドキャストを収録する際、なぜ男性の声が音漏れしやすいのですか?

A. 男性の声は90〜130Hzという低音域にあり、木造アパートの壁や床を透過しやすいためです。特に70dB程度の声量でも、隣室で50dB前後の音として聞こえ、深夜には騒音と感じられやすくなります。

Q. ポッドキャスト収録時の音漏れを防ぐには、どれくらいの防音が必要ですか?

A. 理想的には20dB以上の減衰が望ましく、最低でも10dBの防音効果が必要です。これにより夜間の環境基準である45dB以下を維持できます。

Q.ポッドキャスト収録を行うために、手軽にできる防音対策にはどんなものがありますか?

A. まずは収録する向きや時間帯の工夫が効果的です。例えば、隣室に向かって話さない、21時以前に収録を終える、窓やドアの近くで録音しないなどの工夫が音漏れ軽減に繋がります。

Q.ポッドキャスト収録で、ピアリビングの商品を使った効果的な防音方法には何がありますか?

A. 「HISOHISOブース」や「おてがるーむ」など、音源を囲う方法で20〜30dBの減衰効果があります。また「ワンタッチ防音壁」は部屋を狭くせずに〜10dBの効果があり、中〜高音域の音に特に有効です。

Q.防音パネルだけで男性の声の音漏れは防げますか?

A. 防音パネルは中〜高音域(250Hz以上)に効果があるため、男性の低音域には限定的です。より高い効果を求めるなら、音源を囲うブース型の対策がおすすめです。

まとめ

今回は、木造アパートでのポッドキャスト収録中に発生しやすい「男性の話し声」の音漏れを防ぐ方法についてご紹介しました。話し声程度の音量であれば、ちょっとした工夫次第で隣室への音漏れを十分に軽減することが可能です。また、防音対策を施すことで、室内の音の反響が抑えられ、録音時の音質が向上するというメリットも得られます。まずはできるところから、ぜひ試してみてください。

参考文献・出典