「家で趣味の楽器を練習したいけど、苦情が来るのは怖い…」「防音室を導入したいけど、どれがいいか分からない…」「自分で設置できる防音室って効果あるの?」
RC造(鉄筋コンクリート)のマンションとはいえ、音が漏れてトラブルに発展しないか不安ですよね…。
この記事では フルート演奏 を想定して、楽器演奏に適した防音室を選ぶポイントや賃貸でもDIYできる防音室の作り方など事例を交えながらご紹介していきます。
▼今回のお悩み
物件:RC造
どこに対して:全て(隣室・上階・階下・屋外)
音の種類:フルートの演奏音
いつ:休日や夜間
音の大きさ:〜100dB
フルートの音の周波数と大きさ
フルートの音の高さ(周波数)は260〜5kHz、音量は60〜110dBと、音域も音量も幅広いことが特徴です。
例えば、RC造のマンションで100dBほどの音が出ていた場合、隣室では 通常時 30〜40 dB の静けさが 50〜60 dB まで跳ね上がり、会話より大きく聞こえてしまいます。
さらに、窓やドアなど隙間ができやすい部分からの音漏れもあるため、夜間まで練習する場合は防音対策をしないとトラブルに発展する可能性があります。
図:複数文献を参考にピアリビングにて作成(主な出典:1〜16参照)
室内の音は何dBまで抑えられるとベスト?
私たちが普段暮らしている中で「これくらいの音の大きさが望ましい」という目安は、環境省の「環境基準」で定められています。
住宅地の場合は、昼間は55dB以下、夜間は45dB以下が理想とされています。(※参照:環境省 騒音に係る環境基準)
そのため、早朝を避けた時間帯で昼間(9:00〜18:00)に練習する場合、室内では70〜80dB以内、夜間(18:00〜24:00)に練習する場合は60〜70dB以内に抑える必要があります。
フルートは比較的全方向に音が伝わるため、お部屋の窓や壁など部分的に防音対策するというよりは、防音室などで音を囲う方法が一番効果が高くなります。
理想的な防音性能の目安
今回はRC造のマンションで壁の遮音性能がD-50(約 −50 dB)、窓の遮音性能がT-1(約 −25 dB)、床の性能がL-50(約 −50 dB)だった場合に、どのくらいの性能がある防音室を選べばいいのか表にまとめてみました。
防音室の性能を表す際に用いられるのが「Dr値(D値)」です。Dr値は、「500Hz帯で何dB音を減衰できるか」を示す遮音等級で、数字が大きいほど遮音性能が高いことを意味します。
フルート演奏音源:音量 100 dB の想定
防音室の性能 | 防音室の外に漏れる音 | 屋外に漏れる音 | 体感目安 |
Dr-20 | 80 dB | 50〜55 dB | 同じ室内で演奏している曲は聞こえるが、隣室や屋外では生活音に埋もれる程度の音量。日中の練習は問題ないが夜間では不十分。 |
Dr-30 | 70 dB | 35〜40 dB | 隣室では耳を澄ますとわかる程度。外部は住宅街の昼間と同等の音量。21時までの練習なら現実的。 |
Dr-40 | 60 dB | 30〜35 dB | 夜間に吹いても苦情が出にくいレベルの音量。 |
防音室の外に漏れる音(自室での音)=100 dB − Dr 値
防音室を導入する前に知っておくべき基礎知識
防音室にはいろんな種類が存在します。賃貸マンションでも設置できる防音室を中心に、防音性能も合わせてご紹介します。
防音室にはどんなタイプがあるのか?
ユニット型防音室

ユニット型防音室とは、既存の部屋の中に、あらかじめ工場で製造されたユニットを組み立てて設置するタイプの防音室です。部屋全体を防音工事するのではなく、部屋の中に「防音室」という小さな部屋を作るイメージです。
サイズや防音室のメーカーによっても価格は変動しますが、60〜200万円+組立費用+運送費用がかかります。また、重量が200〜500 kg程となるため、事前に管理会社の許可が必要になってきます。搬入する際もユニットサイズが固定のため梁や間口が狭い物件では搬入が難しいケースもあるので注意です。
性能の目安
遮音等級 Dr-40=500 Hz 帯で約-40 dB 減衰。
組立式簡易防音室

比較的安価で、自分で組み立てられるタイプの防音室です。ピアリビングの組立式簡易防音室「おてがるーむ」は、内部の防音パネルの構造が吸音材と吸音材の間に遮音材を挟んだサンドイッチ形状になっており、中低音域の音を吸音する素材を使用しています。
商品が届いたその日に組み立てが可能。説明書に沿ってパーツをつなぎ合わせることで、DIYに不慣れな方でも1時間程度で完成します。価格は、高さ1940mm× 幅915mm×奥行1210mmサイズで209,000円(税込)。引越しても繰り返し使えることも人気の理由です。
デメリットとして、サイズが限られていることや、室内の換気ファンが簡易的なため夏場は室温が上がりやすくなることが注意点となります。
性能の目安
遮音等級 Dr-25〜30=500 Hz 帯で約-25〜-30 dB 減衰。

簡組立式防音室「おてがるーむ」
平均最大27dBの軽減効果(500Hzの場合)/吸音×遮音のサンドイッチ構造/簡単設置・再組立可/内寸幅815×高さ1880×奥行き1110mm/2色展開
価格:209,000円(税込)
DIYでつくる防音室

賃貸でも壁紙を傷つけずに防音パネルと組み立て部材を組み合わせて、自分の好きなサイズに作ることができるタイプの防音室です。防音パネルはピアリビングオリジナルの「ワンタッチ防音壁」、組み立て部材は「ラブリコ・2×4材セット」と「塩ビジョイナー」の併用がおすすめです。出入り口は、簡易的に防音カーテンを設置したり、取り外しができる防音ボードなどを設置する方法があります。電話ボックスに近いサイズで20〜30万円程度の費用。
ワンタッチ防音壁で防音室を作成する方法は、下記のブログで紹介しているので良ければご覧ください。
性能の目安
遮音等級 Dr-20〜25=-20〜25 dB 減衰。

防音パネル「ワンタッチ防音壁」
防音効果:最大10dB減/高密度+サンドイッチ構造/賃貸OK・オーダーカット・断熱/幅50~5400mm×高さ901~2700mm, 50mm厚/2種10色展開/17,600円(税込)~

取付部材 「ラブリコ・2×4材セット」
壁の前にラブリコと2×4材を立て、それらの間に差し込んだ防音パネルを壁に押さえつけるように設置できるので、ビス留めや接着の必要がありません。

取付部材 「塩ビ ジョイナー」
塩ビ ジョイナーは、吸音材や防音パネル・ボードを壁に設置するのに便利な取付部材です。
フルート奏者の事例をご紹介
実際に趣味やお仕事でフルートを演奏されている女性2名の事例をご紹介します。
組立式防音室「おてがるーむ 」を導入した立川さま

フルートを自宅で練習するため、近隣の音漏れ対策で組立式防音室「おてがるーむ」を購入。購入当時に住んでいた木造アパートでも、そのあと引越ししたRC造のマンションでも苦情は来なかったそうです。
自宅で気軽に演奏ができるようになったことで、フルートやギターを演奏している様子をSNSで配信されたり、オンラインフルートレッスンの講師など、様々な用途で活用いただきました。
Youtubeのショート動画にて、効果の検証動画を投稿されているので、ぜひご覧ください。
DIY防音室(ワンタッチ防音壁+2×4材)を自作した Mari Azemi さま

フルートの練習や演奏する様子をYoutube動画で配信するため、対策を検討。
ユニット防音室も検討していたが、賃貸物件だと重量的にNGな物件が多く、断念したそうです。
そこで、ピアリビングの「ワンタッチ防音壁」に出会い、旦那さんにお願いしてお部屋に合うサイズの防音室をDIYで作ることに。
「ワンタッチ防音壁」を2×4材で支え、出入り口は防音カーテン「コーズ」、床は防音タイルカーペット「静床ライト」と下敷き用防音マット「足音マット」を重ねて設置されました。追加でお部屋の窓にも防音カーテンを取り付け、屋外へ漏れる音も対策。

演奏時の音をスマホの騒音計で計測してみた結果、防音室の性能としては、-20〜25dB、和室からリビングにかけて-30dB程と、音を軽減することができた為、苦情が来ることなく練習や動画撮影をすることができているそうです。
こちらの動画ではMari Azemi さまと旦那さまにインタビューをさせていただいているので、ぜひご覧ください。

防音パネル「ワンタッチ防音壁」
防音効果:最大10dB減/高密度+サンドイッチ構造/賃貸OK・オーダーカット・断熱/幅50~5400mm×高さ901~2700mm, 50mm厚/2種10色展開/17,600円(税込)~

防音カーテン「コーズ」
表面のワッフル構造が、室内に響く音をキャッチして和らげます。厚み・重量を兼ね備え、優れた遮光・断熱効果を発揮。既製サイズとオーダーサイズを用意。
防音効果:★★★☆☆/高密度生地/断熱・遮光1級/既製(幅110cm×丈135~250cm)orオーダーサイズ/2~3色展開/14,740円(税込)~

防音タイルカーペット「静床ライト」
防音効果:ΔLL-4/特殊な3重構造/保温・断熱・防ダニ・防炎機能・カット可/50cm×50cm/12色展開/2,442円(税込)~

下敷き用防音マット「足音マット」
防音効果:ΔLL-3 / 特殊な3層構造 / カット可 / 50×100cm・幅100cmロール / 3,630円(税込)~
お部屋の採寸や設置が不安な方へ
「重い防音パネルを自分で取り付けるのは怖い…」「防音マットを綺麗にカットして敷けるか不安…」
そんなご不安な声にお応えするためピアリビングでは採寸・設置サービスを実施しています。採寸サービスでは、専門スタッフがご自宅に伺い、お客さま立ち会いのもと採寸いたします。その後、採寸寸法をもとにご検討商品のお見積りをお送りいたします。
採寸サービスをご利用いただいた方に限り、商品の設置サービスをご利用いただけます。重さのある防音パネルや防音カーペットの設置に自信がない方、お一人での作業が難しい方におすすめです。

まとめ
今回はRC造の賃貸マンションでフルートを演奏する際に適した防音室の種類や事例をご紹介しました。
自分に合った防音室を選ぶには、まずは ①練習したい時間帯 を決め、次に ②建物条件(建物自体の防音性や耐荷重)をチェック。最後に ③予算や必要サイズを照らし合わせると、最適な対策方法が絞り込めます。
目的 | 推奨タイプ | 参考コスト | 重量・設置時間 |
夜間でも本格的に演奏したい。 | ユニット型防音室 Dr-40 | 60〜200 万円 | 200〜500 kg/専門業者が半日 |
日中〜22 時くらいまで演奏したい。費用も抑えたい。 | 組立式簡易防音室 Dr-30 | 20 万円 | 50 kg/大人2名で30〜60分 |
日中〜夕方くらいまで演奏したい。費用を抑えて、広い防音室がほしい。 | DIY防音室 Dr-20~25 | 20~30 万円 | 50 kg 未満/大人2名で半日 |
本格的なユニット防音室での対策から簡易防音室やDIY防音室など費用を抑えた対策など、ご自身の練習スタイルに合わせた選択を検討されてみてください。
ピアリビングでは無料の防音相談も受け付けています。お部屋の状況や予算に合わせて、どんな対策方法があるかなど、防音のプロがご提案します。気軽にご相談ください。

よくある質問
Q1. 賃貸マンションでも防音室は設置できますか?
A. はい、賃貸マンションでも設置できる防音室は存在します。ユニット型のように重量や搬入経路に制限があるタイプ以外にも、DIYで設置できる防音室や組立式の簡易防音室など、壁や床を傷つけずに設置できるタイプがあります。
Q2. フルートの音量や周波数は、どのくらい防音対策が必要ですか?
A. フルートは260Hz〜5kHzの広い周波数帯で、音量は60〜110dBにもなるため、防音対策がないと隣室で会話より大きく聞こえてしまうことがあります。特にRC造でも夜間の演奏にはDr-30以上の防音性能が推奨されます。
Q3. 防音室のDr値とは何ですか?
A. Dr値(遮音等級)とは、防音室が500Hz帯でどれくらい音を減衰できるかを示す指標で、数値が大きいほど遮音性能が高くなります。例えばDr-30は約70dBの音漏れ、Dr-40は60dBの音漏れを想定しています。
Q4. 賃貸でおすすめの防音室の種類と価格帯は?
A. 以下のようなタイプがあります:
ユニット型(Dr-40):夜間演奏向き。60〜200万円、200〜500kg。
組立式簡易防音室(Dr-30):日中〜22時向き。約20万円、50kg。
DIY防音室(Dr-20〜25):日中〜夕方向き。20〜30万円、50kg未満。
それぞれ練習時間帯や予算、建物条件により選択します。
Q5. 自分で防音室をDIYする場合、どんな部材が必要ですか?
A. ピアリビングの防音パネル「ワンタッチ防音壁」と取り付け部材「2×4材+ラブリコ」「塩ビジョイナー」を組み合わせて構築できます。出入口には防音カーテンや防音ボードを使うことをおすすめします。
Q6. フルート演奏で実際に導入された防音室の効果は?
A. 「おてがるーむ」などの組立式防音室では、木造やRC造いずれの賃貸でも苦情なしという事例があり、-20〜25dBの遮音効果をスマホ騒音計でも確認。DIY防音室でも-30dBの軽減効果が確認されています。
Q7. 防音室を設置する際に管理会社への確認は必要ですか?
A. 特にユニット型防音室は200〜500kgの重量があるため、設置前に管理会社の許可が必要です。組立式やDIYタイプであっても、共用部分や床への荷重に関しては事前確認を推奨します。
Q8. 音漏れを防ぐには部屋のどの部分に注意すればいいですか?
A. 音は窓やドア、壁の隙間から漏れやすいため、窓には防音カーテン、床には防音マットやタイルカーペット、ドア周辺には隙間テープや防音ボードの設置が効果的です。
参考文献・出典
- 【1】井上勝夫「マンションの音トラブルを解決する本」
- 【2】DPA Microphones「楽器の音響特性」Mic University
- 【3】Martinezら「都市騒音の評価と低減策」、Environmental Science & Technology(2001年)
- 【4】大林組(1987)「トンネル発破音の特性とその対策例について」『技術報告書』第34号、29頁。
- 【5】Haselhurst, D.(2024).「ギターの音量はどれくらい?【決定版ガイド】」Guitar Mammoth.
- 【6】Johnsonら「COVID-19パンデミック下の公衆衛生対策」、Public Health Reports(2020年)
- 【7】Leeら「精神疾患の疫学研究」、Journal of Psychiatric Research(2005年)
- 【8】Kimら「子供の睡眠と健康に関する縦断研究」、Sleep Medicine(2021年)
- 【9】Garciaら「騒音曝露と心血管リスク」、Environmental Health Perspectives(2011年)
- 【10】Smithら「騒音の人体影響に関する研究」、Environmental Medicine Journal(2006年)
- 【11】iZotope「ドラム音のイコライジング方法」
- 【12】Zhangら(2019)「高速鉄道の騒音解析に関する研究」『Chinese Journal of Mechanical Engineering』。
- 【13】川口直也・石原勝洋「生ドラム演奏音の周波数分析と騒音対策」『騒音制御』第4巻第1号、2010年、15–22頁
- 【14】Zając, M., & Słowik, M.(2016)「低速道路における路面の騒音特性」『Coatings』第6巻、第2号、15ページ
- 【15】Leventhall, H.G.(2004)「低周波騒音と不快感」『Noise and Health』第6巻第23号、59–72頁。
- 【16】株式会社LoopGate(2025)「音声通話における人の声の周波数や音質、聞こえ方の違いについて解説」
- 【17】堀田龍也(2016)「言語音の周波数と音圧レベル」『hellog ~ 英語史ブログ』慶應義塾大学文学部教授