
「自宅で楽器を演奏していて、お部屋を防音仕様にしたい」「防音対策をしたいけど何から始めたら良いか分からない」
防音対策を考える場合、音の種類、音の発生源を知った上で正しい防音対策を行うことがとても大切です。この記事では、防音の基礎知識から場所別の防音対策まで解説していきます。
↓こちらの動画でも解説しています。
目次
防音の基礎知識
防音の基礎知識をお話する上で、最初に2種類の音の存在についてお話します。1つ目が空気音、2つ目が固体音になります。
空気音…空気を介して伝わる音。人の声、楽器の音、車の走行音など。
固体音…固体を介して伝わる音。床を歩いた時の音、壁を叩いた時の音など。固体音は空気中に放射される際に空気音となる。

例えば、マンションの上階の住人がピアノを演奏した場合。鍵盤を叩く動作やペダルを踏む動作により、それらの振動が床、下の階の天井に伝わる(固体音)→床や天井の振動が空気を振動させることで音が聞こえる(空気音)となります。
つまり固体音は物を振動させることで空気を振動させて、結果空気音にもなるのです。
まずはご自身が対策したい音が「空気音」なのか「固体音」なのかを把握しましょう。
それでは次に、防音を考える際に重要な「吸音」「遮音」「防振」の3つの概念と、空気音、固体音はこれら3つのどの方法が効果的なのかをお話します。
吸音とは
吸音とは、音が材料に当たったときに、音のエネルギーの一部が熱エネルギーに変換されて、反射音が小さくなる現象です。一方で反対側へは吸収されなかった音は透過します。

吸音材には、グラスウール、ロックウールなど、多孔質の材料がよく使用されます。吸音材は、音が材料内部の小さな穴や繊維の間を通り抜ける際に、空気の摩擦や振動によって熱エネルギーに変換されることで吸音効果を発揮します。
代表的な吸音材
グラスウール | ガラス繊維でできたグラスウール吸音材。吸音性が高く安価。 |
ロックウール | 鉄鉱石でできたロックウール吸音材。グラスウールよりも吸音性は落ちるが、耐火性が高い。 |
その他繊維・発泡系 | ポリエステル素材、ウレタン素材などがある。 |
有孔ボード | 特定の周波数の音を吸収する。 音楽室の壁などによく見られる |
ピアリビングの吸音材




遮音とは
遮音とは、音を遮断して反対側に音が伝わらないようにすることです。一方、室内に対する音は反射してしまう大きく聞こえます。遮音には、質量のある材料を使用することが効果的です。 例えば、コンクリート、石膏ボード、遮音シート、鉛シートなどです。遮音性能は、材料の密度と厚さによって決まります。

遮音は、外部からの騒音の侵入を防いだり、室内の音が外部に漏れるのを防ぐために重要です。
代表的な遮音材
遮音シート | 薄くて軽い遮音材。 |
コンクリート | 重量があり、遮音性能が非常に高い。 |
石膏ボード | 比較的安価な遮音材 |
ピアリビングの遮音材


防振とは
防振とは、振動を抑制することです。振動源から発生する振動が、床や壁などを伝わって、他の場所に伝わることを防ぎます。防振には、ゴムやフェルトなどの弾性材料を使用することが効果的です。弾性材料は、振動エネルギーを吸収することで、振動を抑制します。

防振対策には、床にゴムマットを敷いたり、防振ゴムを使用する方法があります。
ピアリビングの防振材


ここまで吸音と遮音と防振の概念についてお伝えしました。
それでは、「空気音」「固体音」を防音するためには、「吸音」「遮音」「防振」のうちどれが重要なのでしょうか?
結論をお伝えすると、
・空気音→吸音材や遮音材を用いることで、音を小さくしたり遮断したりすることができる
・固体音→防振材を用いることで、振動を抑制することができる、またそれに加えて空気音の対策も行う
となります。
お部屋のどこを優先的に対策すべきか
次に、「お部屋の中で音漏れしやすい場所の把握」「どこに対して音を防ぎたいのか、もしくはどこから聞こえる音を防ぎたいのか」の2点についてお話します。
お部屋の中で音漏れしやすい場所
下記のイラストをご覧ください。これは500Hzの音を出した場合、壁、窓、ドア、床に対して、どの程度音を遮断できる性能があるかを表したものです。

※dBとは音の大きさを表す単位で、dBの数値が大きいほど、音が大きいことを意味します。日常生活における音の大きさは、以下の通りです。
ピアノの音…90dB
車の音…80dB
話し声…60dB
例えば90dBのピアノの音はお隣で聞いた際、壁を通じて聞こえる音は40dB(壁の遮音性能である50dBを引いた数値)になるということになります。
ご覧の通り、窓やドアは壁や床に比べて音漏れしやすいことが分かります。理由としては、①薄いこと②隙間が生じやすいことの2点が考えられます。したがって、優先的に窓とドアは防音対策することをおすすめします。
どこに対して音を防ぎたいのか、もしくはどこから聞こえる音を防ぎたいのか
音漏れしやすい場所を把握すると同時に、「どこに対して音を防ぎたいのか、もしくはどこから聞こえる音を防ぎたいのか」を考えることも非常に重要です。
例えば、下の階に対して固体音を防ぎたいのであれば、床の防音対策が効果的ですし、外から聞こえる話し声を防ぎたいのであれば、窓の防音対策が効果的です。
それでは最後に、場所別の防音対策についてお話します。
場所別の防音対策
ドアの防音対策
まずは、お部屋の中で最も音漏れする可能性が高いドアについてご紹介します。ドアは15dB程度の遮音性能しかないため、大変音漏れしやすいです。ただしドアの場合、質量を増やして遮音性を上げることは難しいので、できる範囲で遮音性を上げる+隙間を塞ぐ対策をおすすめしています。具体的には以下の3つの方法が考えられます。
①カーテンや防音カーテンを設置する
②隙間テープを使って隙間対策を行う
③防音ボードを取り付ける
①カーテンや防音カーテンを設置する

ドアの前に防音カーテンを取り付けることで、最大10dB軽減される可能性があります。実際に下記の実験動画では、 話し声、音楽で実験を行った際、10dB程度軽減されていました。
ただし10dB軽減されたといっても全く音が聞こえなくなる訳ではありません。耳に響いていた音が和らいで聞こえる程度とイメージしてもらえたらと思います。
ピアリビングおすすめの防音カーテン

ピアリビングで人気No.1の防音カーテン。3枚の布を重ねた多層構造生地が、音だけでなく熱や光を遮ります。
②隙間テープを貼って隙間対策を行う

ドアは隙間からの音漏れも大きいため、隙間テープを使うことで防音に有効です。隙間テープを選ぶ際、「半独立気泡」という形状のものを選ぶことを推奨しています。詳しくはこちらのブログをご覧ください。
③防音ボードを取り付ける

おすすめの防音ボード

高密度吸音材と遮音材を組み合わせた防音ボード。
一気に難易度があがりますが、ドアの前に防音ボードを取り付ける方法も考えられます。出入りの際はやや大変かもしれませんが、こちらの対策は非常に効果的です。
以前こちらの動画では、ウクレレ、フルート、アップライトピアノなど様々な楽器で実験を行いました。最大16dB程の防音効果が得られました。
窓の防音
一般的な窓は25dB程度の遮音性能と言われています。窓の遮音性能はこのようにT値で表し、T-1〜T-4で表されます。数値は500Hzの場合の減衰するdBを表しています。
500Hz以上の遮音性能 | サッシ | |
等級なし | 15dB | 普通サッシ |
T1 | 25dB以上 | 一般的断熱サッシ |
T2 | 30dB以上 | 召合わせ・クレセント部分の隙間を良くした製品 |
T3 | 35dB以上 | 召合わせ・クレセント部分の隙間を良くした製品 |
T4 | 40dB以上 | 二重サッシ |
窓もドアと同様に大きく遮音性を上げることは難しいかもしれませんが、できる範囲で遮音性を上げる+隙間を塞ぐ対策をおすすめしています。具体的には、大きく4つの対策が挙げられます。
①厚手のカーテン、もしくは防音カーテンを取り付ける ②既存のカーテンに裏地ライナーを取り付ける ③二重窓の施工 ④防音ボードの設置
①厚手のカーテン、もしくは防音カーテンを取り付ける
防音カーテンを取り付けることで、最大10dB程度の音の軽減が可能になります。(ピアリビングの防音カーテンの場合)もちろん10dB落ちても音が全く聞こえなくなる訳ではないですが、耳で聞いた時の感じ方が柔らかくなるというイメージです。詳しくはこちらの動画でご紹介しています。
おすすめの防音カーテン

ピアリビングで人気No.1の防音カーテン。3枚の布を重ねた多層構造生地が、音だけでなく熱や光を遮ります。
②既存のカーテンに裏地ライナーを取り付ける
すでにカーテンをお持ちの場合、裏地ライナーの設置をおすすめしています。ピアリビングだと「かんたん防音ライナー」という商品になります。単体だと防音カーテンよりも防音効果は低いですが、既存のカーテンと合わせることで同等の効果が期待できます。
おすすめの防音ライナー
③二重窓の施工
カーテンだけだと物足りない!という方は二重窓の施工をおすすめしています。二重窓にすることで20dB以上の効果が得られます。二重窓を選ぶ際は、同じ厚さのガラスだと共振してしまうので厚さの異なる複層ガラスを選びましょう。
④防音ボードの設置
二重窓は防音効果が高い一方で、賃貸物件だと設置が難しいというデメリットがあります。そのような方にはピアリビングの「窓用ワンタッチ防音ボード」という防音ボードをおすすめしています。こちらの商品は高密度の吸音材と遮音材を使用して作られているため、質量が高く左右と上部にゴムのパッキンがつけられているためしっかりと窓からの隙間を防いでくれます。
おすすめの防音ボード

高密度吸音材と遮音材を組み合わせた防音ボード。
床の防音
ここまで窓とドアの防音についてお話しましたが、実は防音が非常に困難なのが床の防音です。床は固体音、特に重量衝撃音と呼ばれる非常に大きな衝撃が加わるケースが多く対策が難しいです。また、固体音は空気中に放射される際に空気音にもなるため、固体音と空気音、どちらの対策も考える必要があります。
例えば子供が走る音は床を振動させ、壁や天井に伝わり、それらの振動が空気音となり音を発します。子供の足音を防音する場合は、床に伝わる振動そのものを和らげる防振、振動によって発生した音を吸収・遮断する吸音と遮音が必要になります。
床の防音を行う場合は、弾性・質量・吸音を兼ね備えた防音マットを敷くことをおすすめします。ピアリビングでは防音タイルカーペット「静床ライト」や表面がフローリング調の「快適防音マットウッド」がおすすめです。
また防振性を高めるために、下敷き用防音マット「足音マット」を敷くとさらに効果的です。
おすすめの防音マット



壁の防音
本来壁はお部屋の中でも音漏れしづらい箇所になりますが、建物によっては対策が必要になります。壁の遮音性能は以下の通り、D値で表します。(数値は500Hzの時の減衰値を表す)
壁の遮音性能
音の聞こえ方 ※テレビ、ラジオ、会話などの一般の生活音 | どのような壁? | |
D-25 | はっきり内容がわかる | 戸建住宅 |
D-30〜D-35 | かなり聞こえる | 木造 |
D-50 | ほとんど聞こえない | RC造 |
上記の表から、戸建の壁や木造の界壁は比較的遮音性能が低いことがわかります。そのため壁の防音対策を行う場合、質量を増やして、遮音性能をあげるための対策が非常に重要になります。また同時に吸音も考慮することで、音の反射を防ぎ、結果周りへの音漏れも小さくなります。
ピアリビングでは高密度吸音材と遮音材をサンドイッチしてつくった「ワンタッチ防音壁」という防音パネルがおすすめです。質量はコンクリートや石膏ボードに比べると落ちますが、ワンタッチ防音壁はDIYが苦手な方でも設置がしやすく、表面はグラスウール吸音材でできているため非常に吸音効果が高いことが特徴です。
おすすめの防音パネル

「ワンタッチ防音壁」
いかがでしたでしょうか?
今回は「部屋を防音仕様にしたい」という方に向けてお話しました。
まずは、ご自身が悩んでいる音の種類を特定し、どこに対して音を防ぎたいのか(orどこから漏れる音を防ぎたいのか)を整理してみることをおすすめします。
これらを整理することで、費用対効果の高い、より効果的な防音対策を実現しやすくなるのではないかと思います^^ぜひ、一歩ずつ取り組んでみてください!